猫と蝶と僕11
猫と蝶と僕11
左も右も色鮮やかなネオンを発したラブホ街。
当然、僕も涼子もチラチラと目が泳ぐばかり。
ラブホ街を数十メートル歩く二人。
依然手も繋がぬまま、絶妙な距離間を保つ二人。
この距離間は一体何なのか?
いつもの酔っ払いの僕なら、思いっきり手を組んで、
「ここのホテルでいーじゃん!入ろっ!」
ってエスコートできていたはずなのに…。
何度も自分に問いかけた…。
アスカに対しての…、恋人がいながらの…、ただの穴埋めから来る申し訳なさなのか…。
それとも、涼子をアスカ以上に大切な人と思えつつある人になってきているからなのか…。
僕も涼子も異性と、ラブホに立ち寄った経験は無いわけではなかったが…。
今は、アスカと微妙な恋人関係。少しのすれ違い、小さな口喧嘩から産まれてしまった大きな溝。
そして、たまたま夜の世界で対峙してしまった涼子との友達以上、恋人未満の関係。
やはり、アスカは猫…。
喧嘩して勝手に出て行ってしまったアスカ。
何も応えない猫のようなアスカ。
あれだけ僕に頼って、なついていたのに…。少しの溝が、こんな結果を招いている事実。
結果というのは、寂しさを埋めるための夜の散歩、そして会ってはいけなかった涼子との偶然の再会。
そして、涼子は蝶…。
甘い蜜に誘われて、もしくは自分の弱さとか、寂しさを埋めるために、たまたま再会した涼子を追ってしまった僕。
涼子は、蝶のように、居酒屋街から、ラブホ街に飛んで行き、僕はその綺麗な振る舞いに心奪われてしまう。
さらには僕…。同じ庭、フィールドの中で、三人そのものの性格やら、恋愛背景、今までの過去、そして今後の未来までも描いてる上に、想像さえもできてしまうのだ。
アスカと涼子と僕。
そして、アスカである猫と、涼子である蝶。
僕は何を信じて、誰を好きになり、そして誰を愛し、誰から愛を分けてもらえるのか…。
卑怯で、かつ汚いまでの三人の関係を美化するもの…。そして貪欲なまでの、自分の心に空いた穴を埋めて欲しいという感情。
涼子とたどり着いた場所、ラブホテル『blue butterfly』
地元のカップルの中では、ブルバタと呼ばれ、青くライトアップされたホテルの装いは、酷く美しさを醸し出す。
この青い城の中で、どれだけの愛を育むカップルがいたのだろうか…。
それが、正真正銘の愛でも、下心丸出しの恋でも、浮気でも、不倫でも…。
涼子との過ちと考えるか、これで良かったんだってと考えるか…。